あたたかい雪
メールではなく電話で返ってきた――その意味など考えることもなく通話ボタンを押し、「もしもし」と言おうとすると、言い切らぬ内に相手が声を被せてきた。


「おう美穂、おれおれ」
 何やら急いでいるような感じだが、恋人の荒木昌彦の声で間違いない。


「おはよー。メール見てくれた?」


「見たよ。それより美穂、いまどこにいる?」


“それより”とは何だと思ったが口にはせず「家にいるけど」と言うと、昌彦は「よかった。これからそっち行くから」とそれだけ言い、あっさりと電話を切ってしまった。
< 10 / 22 >

この作品をシェア

pagetop