薇姫/獣帝









「俺は、俺はっ………」













佐野の涙で滲んだ世界の中でキラリと銀の鋭い光が私を奮いたたせた。










『………藍城の奴等を見て、あいつ等の心に触れる度……






心が無くす事を拒む様になった。









あいつ等の…争いからの冷たく痛い代償を受けるたび、苦し気に顔を歪める事。












入るまで何も知らなかった。















仕事を本格的にしだした頃には、もう…







藍城が落ち着く場所になっていた…











皮肉なモンだよ、あいつ等の居場所を…私は奪おうとしたんだから……』











滲んだ視界は弾けたようにクリアな世界となった。















『……お前の痛みが解るとは、言わない。















だけど、











辛くて痛いのはお前だけじゃ無い事を知れ…………‼』















カランカランと冷たく響いたナイフは下に落ちて「いいのか?」と問いかけている様だった。









…………いいさ。









「うあああぁぁぁあああ‼」

















泣き叫ぶ佐野の涙と声が遠くの出来事のように掠れて視界が狭まっていく。




私の名前を呼ぶ彼等の声も聞こえていた。





だけど、自分を否定する心と自分を眠らせようとする欲がそれを全て掻き消した。






目を完全に閉じて暗闇へと身を投げようとした時、



















「…………強くなれ。」













そんな、あの子の声が…………

















聞こえた気がした。


























・*.°+..・:'.









< 364 / 430 >

この作品をシェア

pagetop