注文の出来ない喫茶店【短編】
「お客さん、店で寝ては困ります」



「えっ?あっごめんなさい…」



って寝てないし
うとうとし始めたところじゃん



残りのミルクも飲んじゃおっと…








「お客さん」



「なに?」



「宜しければ、こちらを」



ん?
何これ?
使えって事?



「アハハハハハハァー」



何これ
あたしの口のまわり
白いヒゲついてんじゃん
子供じゃないんだから…
はぁ、見事なマヌケ面が
鏡に映ってるよ







「ご馳走さまでした」






そして、あたしは鏡を返すとその店を出たんだ
品のいいおじさんは、ミルクのお金取らなかった
あたしの面白い顔で楽しませてもらったからって…
失礼よね




さあ、早く帰って
シャワーして
若作りメイクして
髪、盛って…



あーあ
やだなぁ
売上げ取らなきゃ
バイトもパッとしないし…



ほんと、なんであたしばっかり…



だけど、ほんの少し
あたしの足取りは
軽かった
相変わらず
退屈で面白くない毎日が
あたしを押し潰そうと
しているけれど
それでも
ほんの少し
軽かったんだ








棚橋 リカ
ホットミルク 飲み干す





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