たった一つのお願い


すると奴は案の定くだらない事を語り始めた。




「お前の学内での噂」




あぁ…何となく言いたい事が分かった。




「全部は知らないが…“堅物”とか“動く石像”とかか?」




俺は学生時代、あまりに人付き合いをせず、本ばかり読みふけり、とうとう石像扱いをされた。
女に誘われても適度な程度のお付き合いしかしなかったから余計にそう噂されたのだ。


…俺はただ単に大学内でその手の噂をされるのが嫌だったから、学内の女に手を出さなかっただけなのだが。詰まるところ外ではそれなりに遊んでいた。



そしてその場面をたまたまコンパ帰りの祐司に見つかり、何故かこうして仲良く飲みに行く付き合いになった。




「それもそうだけど、もう一個あったんだぜ?」




もう一個?
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