たった一つのお願い


「理央、今日は仕事ないんでしょ?帰らないの?」



「今日は職権を乱用して居残る名目で春陽と一緒に居る事にした」




でないと俺が眠れそうにない。ただでさえ…いや止めておこう。まぁ、眠る気はないが。
春陽のお父さんの訪問に気づかないぐらいグッスリ眠っていただなんて、こんな深い眠りは久しぶりだ。




「ワーイ。じゃあ、理央と今日は一緒なの!?」




あぁ…襲いたい。


しかし今それを言うとさすがに冗談以上の物で受け取られてしまうからな。また円周率でも考えるか…かなり飽きたが。




「理央もベッド入る?」



「止めておく」




円周率どころじゃなくなる。


俺は壁に椅子を近付け、背もたれの低い椅子に壁に頭をもたれさせる事でその不足分を補う。
左横には春陽の枕がある。



だが、俺も男だ。
春陽に関する特典のない事はしない。


だから。




「春陽、手出して」




彼女は布団からスルリと出して枕の横に手を置いた。




「今日はこのままだ」




俺は彼女の手にそっと手を重ねる。
彼女が寝苦しくなれば、位置を変えれば良い。


俺は今日、円周率を考えながら星を眺めようと決めていた。
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