たった一つのお願い


「春陽。今日から少し忙しくなる。だから…昼休みも短くなる」




付き合い始めて早々に言う言葉ではないのだが、コレばかりはどうしようもない。

2ヶ月後、確実に休みをもらうためにはそれ相応に人より仕事を多くしなければならない。
医者に基本、休みはない。取ろうと思えば取れるが、あまり穴をあけたくない。
まだまだ他人に比べたら経験も浅いが、俺を待ってくれる患者さんも居る。
だから、俺は時間を仕事に費やすしかない。




「…そっか。お仕事頑張って」



「寂しかったら、言うんだぞ?」



「私はもう子供じゃないですよー」



「そうだな。
でも、俺の彼女だからな?」




そう言うと彼女の頬が赤らんだ。
…やはり、この高揚感は彼女にしか為せない技だ。
< 59 / 264 >

この作品をシェア

pagetop