たった一つのお願い
「三神先生、どうなされたんですか?
今日は顔色が悪いですよ?」
気づけば書類の上にボールペンを乗せたまま何も書いていなかった。
付き添いの看護師に指摘され初めて気づく。
「あぁ…寝不足が続いたからですかね」
さすがは俺だ、と言いたい。まだ俺はこの上辺だけの笑みを浮かべられるのだから。
「三神先生の笑顔は…嘘っぽいですね」
当たり前だ。
「嘘ですからね」
――やはり俺は疲れているらしい。こんな墓穴を掘るような事、俺の印象を変えるような事、今までなら絶対言わなかったのに。