海賊王子ヒースコート(1)


(これほど多く海軍の方々がいらっしゃるのに、クレマン海賊団の皆さんは町を歩けるのでしょうか…?)


合流したくても、どこに向かえばいいのだろうか。

途方に暮れつつ賑やかな広場へやって来た。


(それに、裁判はいつ始まるのでしょう?さすがに今日ではないようですが…)


広場の中央にある噴水の傍まで歩き、立ち止まる。

時刻は午後の一時半。

「ハァ…」

自分にできることを頑張る。

そう決めたはずなのに、初っ端からくじけそうだ。

アイリーンが自分の情けなさに俯いた時だった。


「ねえ、君。一人でどうしたのかな?」

海軍服を着た一人の若い男性が話し掛けてきた。

「え…あ、その」

あまりにも唐突で、アイリーンは戸惑った表情で弾けるように顔を上げた。

「観光?ガルニカは初めてかい?良かったら案内しようか」

にこやかな表情で腕を掴まれる。

ナンパには気をつけろと言っていた兄の言葉を思い出し、アイリーンは慌てた。

「いえ…!私はっ…」

と、その時。


「おい、オレの女ナンパしてんじゃねーよ」



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