荒れ球リリーバー
「欲しいって言ってたろ?」

セイの言葉に、記憶を掘り起こす。

一年以上も前の事だ。

テレビでユリのエッセイ本サイン会を見た時。

二人で座るソファーの上で、確かに私そんな事呟いていた気がする。



セイは、始球式の夜の事を全て話した。

セレモニーが終わるのを見届けてから、ベンチ裏でユリにサインを頼んだ事。

サインのお礼に、ユリのマネージャーさんも含め何人かで食事に行った事。

ユリとは何もない事。

「俺の事、信じて」

真剣な顔して誠一郎は、私に訴え掛けた。

浮気性で言い訳ばかり。

まさしく荒れ球な誠一郎。

だけど、今この瞬間。

揺るぎないこの眼差しと真っ直ぐなこの言葉は、信じられると思う。

「うん…」

だから、私は小さく頷いた。

信じさせて。誠一郎。
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