荒れ球リリーバー
同時にテーブルの上に置かれた紙袋。

「何?」

私は、突然差し出された袋を怪訝そうに見て問い掛ける。

「開けてみろよ」

対照的に柔らかい笑顔を浮かべる誠一郎に促され、袋の中身を取り出した。

「え?」

袋の中身は、部屋から消えたユリのエッセイ本。

どういう事?

訳の解らない私は、困惑した表情で誠一郎を見つめた。

「中。見てみろ」

相変わらず柔らかい笑顔を浮かべる誠一郎に再び促され、今度は本を手に取り表紙を開く。

「これっ…」

真っ白な筈の見開いた表紙裏。

そこには流れるような文字が記されていた。

《3.29 志乃さんへ yuri》

それは間違いなく、ユリのサインだった。
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