カラフル
放課後のあたしたちは、教室を出てから靴箱へ向かうまでの間に、立ち寄る場所がある。
「見える?」
「うん、見える。ほら、向こうの端」
「……本当だ。あれ、先輩は?」
「先輩はあっちだよ」
体育館と体育倉庫の間には、幅50センチくらいの細い隙間があるの。
あたしたちはいつもその隙間にカニ歩きで滑り込み、雨の跡が白く残ってる小さな窓から、こっそりバスケ部の練習風景を眺めてる。
「いつも思うんだけどさ、こんなところに入らなくても、堂々と応援すればいいんじゃない?」
窓にしがみつくあたしと郁に、佐奈はシレッとつぶやく。
「だめだよ。バスケ部の女子が、感じ悪い目で見てくるんだもん」
中の様子を眺めていたあたしは、視線を男子バスケ部から女子バスケ部へ移し、口を尖らせた。
「同じ部だからって、男子を自分たちのものみたいに思ってるところ、あるよね!」
横でうんうん頷く郁も、女子バスケ部に不満を持っているようだった。