オオカミ少年。
「一番奥の部屋な。」
「はーい。」
中田の家に着くと、家の中はシーンとしていて誰もいないみたい。2人だけか。
そんなに頻繁に来ているわけじゃないし、2人になるのもそうあることじゃない。だって必ず誰かいるんだもん。
「あつ…」
中田の部屋は蒸し暑くて、入っただけで汗がジワッと出てきた。
階段を上る音が聞こえてきて、それと一緒に氷がコップに当たるカランカランという音も聞こえてきた。
「座れば?」
「暑いんだもん。」
「わがままー」
なんて言いながらも、中田は笑ってあたしの頬に冷たいコップを当てた。頬がジワジワと冷えていく。
「ほら、ケーキ。」
「わっ、やった!」
切り分けられたショートケーキの上には【HAPPY BIRTHDAY あゆみちゃん】と書いてあるチョコのプレートが乗っていた。
「誕生日おめでとう、歩未。」
「ふふっ、ありがと、悠。」