彼氏がいるのにマラソンで…
気が付けば、オデコに猛2と書かれた方を突き放し、私は大きく足をほうりだすように前へ前へとスライドさせていった。

見よう見まねだけど、無我夢中で足を出した。

すると、いつもとは違う風の受け方をし、視界の流れる景色もまるで違って見えた。

もっと速くではなくて、もっと遠くへ。

今まで階段をひとつひとつ踏みしめながら登っていたのに対し、この走法は一段も二段も飛ばしながら強引に背中に羽が生えたように進んでいく。なんだか自分が特別な存在のように感じた。

ペース配分は無視してスライドの幅をじわじわと広くする。地面を蹴る力に想いを乗せる。追いかけるということがこんなにもワクワクとしたのは初めての事だ。

どんどんと彼の背中が近づいていく。

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