赤い月 終

辿り着いた理事長室の前で、足を止める。

景時が振り返ると、やはりうさぎは不安そうに彼を見上げていた。


(このままココで、食っちまいてぇ…)


いやいや、朝デスヨ?
学校デスヨ?

自重しろ、俺。

昨夜から引きずっている煩悩をなんとか制御して、景時はうさぎの頭に軽く手を置いた。


「大丈夫。ね?」


返事はない。

だがうさぎは景時の甘い微笑みをジっと見て、観念したように頷いた。


「ジジィ?」


ノックもせずにドアを開けると、秋時は書類に目を通しながら窓際に立っていた。

スリーピースのスーツを着こなす、ロマンスグレー。

いつもはかけない洒落た眼鏡も、実に様になっている。

…所詮、老眼鏡デスケドネ?

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