赤い月 終

「おー、どーした?
今日は早いな。」


秋時は扉の前の人影を一瞥した後、すぐに手元の書類に視線を戻した。

数秒後、勢いよく顔を上げ、景時の後ろに隠れるように立つうさぎを目にして…

バサっ

持っていた紙束を全て足元に落とした。

目も口もフルオープンになったその顔…

燻し銀の魅力はドコ行った?


「あの…
先日は、本当にすまぬ事を…
迷惑ならば、妾は直ぐに帰」


「うさちゃん…」


景時のシャツの背を握りしめながら、気まずそうに詫びるうさぎの声も耳に入っていないかのように、秋時が茫然と呟く。

その様子を見て、うさぎは紅い唇を軽く噛んだ。


「景時、妾はやはり帰る。」


「えぇ?!
待って、待って。」


「だが秋時が…」


「ちょ… 話せばわか
ぅおっ?!」


「え?」

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