赤い月 終

闇の流れが変わっていく。
一度放たれた闇が、在るべき場所に帰ろうとしている。

呼んでいるのだ、闇を。

赤光が。

景時が。

うさぎがこの場に来たことを、黒曜が景時の嫉妬心に火を点けたことを、今さら悔いてももう遅い。

気づかぬうちに、また運命の輪は廻り始めていた。

おそらくは、景時とうさぎが出逢った夜から。

どう止まる?

ナニが壊れる?

どう止める?

…誰が?

銀の髪で隠れた白く細い首筋に、黒曜の手刀が迫っていた。

うさぎが顔を上げ、素早くその手を掴む。

急に振り向いたせいで、長く尖った黒曜の爪が頬を掠め、一筋の血が流れた。


「何をする気じゃ?」


「?!」


不可抗力とはいえ、うさぎを傷つけてしまった黒曜が狼狽して跳び退り、彼女から距離を取る。


(しまった…)


黒曜は端正な顔を歪め、舌打ちした。

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