赤い月 終
「…
相変わらず、乱暴じゃな。」
魂を抜かれたような深雪の背中を心配そうに見送りながら、うさぎが呟いた。
鬼神の呪は、本当はヒトの動きどころか記憶や思考まで操ることが可能だ。
だからうさぎは、ヒトの心まで支配することのないよう、気をつけて呪を扱う。
だが黒曜には、そんな配慮は見られない。
乱暴で、強引で、容赦のない呪を吐く。
だけど…
「帰さなきゃ面倒だろうが。
あの女の精神は限界だった。」
彼は服を裂かれた深雪に、ジャケットを渡した。
彼は理解し難い厄災に見舞われた深雪の心を気遣った。
荒っぽくてわかりにくいが、それが黒曜の優しさだとうさぎは知っている。