赤い月 終

「なぁ、ジジィ。」


景時は空から視線を逸らして、秋時を振り返った。


「俺、父さんと母さんみたいに、自分がどーなっても幸せでいて欲しい人、見つけたわ。
うさちゃんの心を壊すくらいなら、死んだほーがマシ。」


「…
どいつもこいつも…」


なんでこー、厄介な恋ばっか拾ってくンの?

バカなの?

秋時は頭をバリバリ掻きむしった後、口を開いた。


「記憶、戻ったンか。

千景は…幸せそうだったか?」


「そりゃーもう。
なんせ
『一番輝くあの星が千景だ』
なんて、息子の前でやっちゃう夫婦デシタヨ?」


「「…ぅわぁ…」」


景時が明かしたバカップル逸話に、秋時と薫が眉を顰めてドン引きした。

辺りを支配していた重い空気が、心持ち軽くなる。

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