戸田くんの取り扱い説明書




「戸田1位じゃんかよ!すっげえ!!」


いっ、いいいい1位ですと?!

うわぁ、私には夢のまた夢のまた夢のまた……………



言い出したらキリがない。





「おーい、教室入れーーー!」


そう叫びながらやってきたのは、いつものあの先生達。

現代文の佐藤先生、化学の前川先生、そして世界史の池田先生。



順位表に群がる生徒達を、先生達は羊を小屋にかえすみたいに追いかける。



戸田くんはすでに分かり切ったみたいに、もう教室で座っていた。



……いや、寝ていた。 と言った方が正しいかも。



私も周りに一緒に流されながら教室にたどり着いた。






数学の授業。


いつもは、一瞬たりとも聞き逃すまいと、必死に耳を傾けていた山田先生の面白エピソード。


今日はそれを右から左で、頭の中は戸田くんの事。



いつも寝てばっかりなのに、なんで一位をとれるんだろう…?



なにか秘密兵器があるはずだ!


よーーっし!!







「戸田くん、勉強教えてほしいんですが……」


放課後の玄関で、私は戸田くんにそう言った。



戸田くんは一瞬固まって、頷いた。



「いいよ」


「ほんとですか? やったぁ!」


「でもいきなりどうしたの」




戸田くんが靴を履き替えながら、私に尋ねてくる。


『戸田くんの秘密兵器探るためです!』……なんて口が裂けても言えない!




「…い、いやぁ、今回のテストひどかったから、です…ねー」


「何位」



ゔぅ。

私より頭いいのわかってるくせに…



「さ、314位…です…」


「…うん、すごいね」



すごいね、って言われて落ち込むの初めてです………。



「だから、教えてほしいんですが…」


「あーうん、頑張れー」


「戸田くん思いっきり棒読み!」


「気のせいじゃない」


戸田くんはそう言ったけど、ははって笑っていた。

< 18 / 51 >

この作品をシェア

pagetop