戸田くんの取り扱い説明書



「おじゃましましたー…」

部屋を出る







……のだが。


進んでも進んでも、なかなか部屋から出られない。


こういう時だけアツくなって、意地でもやり遂げようと無理やり頑張るのが私の癖。

しかし、必死になって足を前に出し続けるけど1ミリも前進しない。



「ふぅぅぅぅんんんっ! とりゃっあだっ」


「ばか実里」


「ひゃあっ?!」


ぐいっと腕を掴まれる。

そして首に両腕を回された。



「無断帰宅禁止ですけど」


「戸田くん…!」


寝てたじゃん!

さっきまでガッツリ寝てたじゃん!!



「…寝てたくせに」


「あーはい、どーも」



なにが、「どーも」だようっ!

よっし、意地でも帰ってやる!!


そう思い、戸田くんの腕の中で暴れ始める。



「なにしてんの。今の俺から逃げようとしても無駄だと思うけど」


そう言ったかと思ったら、私のほっぺに軽くキスをした。



「とっ、戸田くん…っ」


「実里が可愛いのが悪い」


「……っ」




ずるい。

ずるすぎる。


なんでこういう時にそんなこと言うのさ。


……戸田くんのばか。







…ううん、今のなし。


「…戸田くん、大好きです!!」


「知ってる」






容姿端麗、スポーツ万能、成績トップ。

なのに、


無口、無表情。



加えて謙虚で、絵が苦手で、たまに強引な時もある。


面倒くさがりでもバイトはちゃんと頑張るし、怖いくらいに喧嘩も強い。


嫉妬する可愛いところもあって、ストレートに物事を言う。




そんなこんな全部ひっくるめて、戸田くんが大好きなのです。





[END]


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