“またね。”
「菜摘ってさ、そんなにわかりやすい?」

「俺と話してんのと山岸と話してんの、顔が全然違う。輝いてるわ」

やっぱりバレてる。

いつだか亮介にも言われたっけ。

『顔が明るかった気がして』

隠してたつもりなのに、菜摘ってそんなにわかりやすいんだ。

ちょっと恥ずかしい。



「山岸もだよ。たぶん」



─…大ちゃん?



「大ちゃんもって…?」

どれに対して『山岸も』なのかが全くわからない。

「山岸って、他人に興味ないべ?」

ああ、わかってるんだ。

そうだよね。

大ちゃんとの付き合いは、菜摘より駿くんの方が断然長い。

それに、大ちゃんに唯一『親友』と呼べる人がいるのなら

それは間違いなく駿くんだと思う。

「俺菜摘と知り合う前から菜摘のこと知ってたよ。名前だけだけど」

話がまとまっていない気がして、頭がついていかない。

自分なりに、必死に整理する。

「えっと…なんで?」

「山岸から聞いてたから」

大ちゃんから、聞いてた?

大ちゃんが、菜摘のことを駿くんに話してたの?

そういえば駿くんは最初から菜摘の名前を知ってた。

大ちゃんに聞いてたから?

「山岸が他人の名前連発するなんて初めてだったよ。菜摘が菜摘がって、楽しそうに話してくるんだ」



─こめかみが痛む。



「だから…山岸はその『菜摘』が好きなんだと思ってた」
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