ある男女の恋愛事情







すると、伊吹くんは待ってましたと言わんばかりにくくっと意地悪気に笑って


「嘘だし、ぶぁーっか」



そう言って、視界から消えた。

あたしの腕をコツン、と小突く杏奈。



…からかわれた。

教室からも微かに聞こえる笑い声。



く、くそぅ…。

折角の話す機会を
無駄にしてしまった。





―――伊吹夏くん。


あたしと同じ
弓道部に所属している男子。


悪戯好きで、気さくで
何気に紳士的で、人懐こい人。





そして、あたしは昔
この人に告白して振られた。





さっきの、悪戯だって何も
あたしだけに言ってる訳じゃない。


他の女子に言ってるとこなんて
もう嫌になるほど何度も見た。



だから、ここで特別感を抱いて
再び恋などに落ちるとあたしは


また痛い目を見るに違いない。




忘れもしない…

小6のあの悲劇を繰り返したくない。






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