10年後も…〜song for you〜
「ねぇ!健くん!ギターそろそろ弾いてよー」
桐谷がホロ酔いながら、絡んできた。
「え?」
「まったく、こっちでもイチャイチャしてるしー。健くん、ギター弾いて!」
桐谷の言葉がやけに響き、みんなの視線が一気にこっちを向いた。
「そうだよ。健!あたしも聴きたい!」
真琴が、目をキラキラさせながら、近付いてきた。
「僕も聴いてみたいです。お願いします」
晴人がまた馬鹿丁寧に頭を下げてきやがった。
「いや、でも…」
俺が戸惑っていると、
「なんだよ。お前が弾かないんだったら、俺がやる」
祐樹がそう言って置いていたギターを持ち上げた。
「わ!バカ勝手にさわんなよ。お前はギター出来ねぇだろ?すぐ挫折したくせに」
「え?先輩もギターやってたんですか?」
晴人が、びっくりした顔で祐樹を見た。
「俺ら、これでもバンド組んでたんだぜ。俺はドラム。健は、ギターにボーカル」
「知らなかったっす!すごいですね」
すると、2人の会話を聞いていた真琴が微笑みながら言った。
「晴人くん、一応人気そこそこあったんだよ。私は、好きだったなぁ…」
「は?まじ?好きだなんて初耳〜」
祐樹が食いついてきた。
真琴は、好きだなんてバンドをしてた頃一度も言わなかった。
帰国した翌日。喧嘩したあの時、アイツが初めて"好きだった"と言ってくれた。
だから、俺はこうして、祐樹に借金までしてギターを再び手に入れた。