10年後も…〜song for you〜
「もうなんでもいいから、早く弾いてよー」
桐谷が、俺達の会話に割って入ってきた。
桐谷は、酔うとめんどくさいことに初めて気付いた。
俺達は、芝生の地面に輪になって座った
。
ギターを構える俺に視線が一気に降り注ぐ。
俺は、無意識的に真琴を見た。
優しい顔で俺を見ている。
目が合うと、真琴はにっこり笑った。
真琴は、俺がギターを弾くことが相当嬉しいみたいだ。
あの日、帰国した翌日の夜と同じ表情をしている。
俺は、真琴から桜の木に視線を移し、深呼吸をした。
目を閉じた。
瞼の裏側に映る情景は、今ここに居るのは、俺と真琴だけ。
そんな俺達を桜の木が見守っている。
俺は、指で弦を押さえた。
そして、音をかき鳴らした…。