10年後も…〜song for you〜
かき鳴らすメロディ。
その音だけがこの空間に響いている。
桜の花びらがヒラヒラ舞い落ちて、この空間の演出を増してくれる。
下手くそな俺の演奏に華を添える桜の木と、俺だけを見つめてくれるお前。
最高のステージだ。
「YOUR SONG…」
真琴の呟きがかき鳴らしている俺の耳元まで届いた。
エルトン・ジョンの「YOUR SONG」
ギターの音は心地よく、自分自身に安心感を持たせる。
かき鳴らしているこの瞬間だけは、悩みも悲しみもすべてを消してくれる。
俺は…
俺はやっぱり、ギターが好きだ。
真琴が俺の演奏を聴いてくれる。
それが、ただただ嬉しかった。
ワンコーラス分歌い終わると、みんなの拍手がそんな俺を現実に引き戻した。
この空間に居るのは、2人じゃない…。
「下手くそでごめん」
俺は、なんだか妙に恥ずかしくなって、顔を伏せた。