10年後も…〜song for you〜
「伊豆先生にはホントに感謝だ。俺、お前と一緒に旅行に行けるなんてすげぇ嬉しい」
健はニコニコしながら、窓の外に目をやっている。
「早く沖縄着かねぇかな〜?」
「ばか。まだ離陸すらしてないし…」
私は、健の横顔を見つめた。
見送りに来てくれないと嘆いていたあたしがバカみたいだったじゃん。
「俺さ、お前より先に飛行機に乗る為に、晴人に車飛ばしてもらったんだぜ」
「え?晴人くんが?」
「アイツお前のことよろしくって改めてお願いしやがった。アイツに言われなくなって分かってるつーの!」
そう言った健は少しむくれている。
「健…もしかして、妬いての?」
「うるせー。わりーかよ」
健が妙に素直で愛おしくなり、フッと笑みがこぼれた。
「晴人くんに後でちゃんとお礼言わなきゃだね」
「おう。妬くけど、ちゃんと感謝してるよ」
健はそう言ってにっこりと笑った。
私は、息をついた。
健と沖縄に行けるなんて、思ってもいなかったので、不安はありつつ嬉しくて仕方なかった。
お母さん、晴人くん、伊豆先生に感謝だ。
みんなありがとう。
私は、心の中でつぶやいた。
健が私の手を取った。
繋いだ手から健の優しくて温かい熱が伝わってきた。
この手は絶対に離したくない。
そんな私達の想いをのせ、飛行機は沖縄に向けて離陸した。