12ホール

亥月は、転院許可を貰い明後日に退院する事になった。

「どうして亥月を襲ったの?」
五月女の問いに少女は答える。

「麻幌を探していた…」

「それなら襲ったりしないで声掛けてくれれば良いだろ!」
半ば呆れた声を衣月が出す。

「お前を麻幌の人形だと思ったからだ」

「それが理由?」
怒る事なく五月女が問う。

「そうだ…」

「どうして?えっと…名前は…」

「…今は…織戸 諳(おりべ あん)と呼ばれ
て居る」

「今?ご両親は?」

「…消した…」
諳は顔色一つ変えない。

「消した…って…お前なぁ…」
ベッドから亥月が身を乗り出す。

「人形だったんだろ?本当の親は?」

「知らぬ…」

「麻幌様に使役されてるから亥月も人形だと思ったのね?」
諳の髪を結ってやる五月女は言う。

「そうだ…すまなかった」
諳は亥月のそばに行き、深々と頭を下げる。

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