12ホール

非日常。


「麻幌(まほろ)?早いな?」

「ああ…黒子にエサ食わせてた…亥月(いつき)は?」

「俺は白子にエサを…」
正面の門は7時半にしか開かない。
二人の青年は多分、同じルートを通って研究棟の並ぶ構内で会う。

「相変わらずだな…黒子にもやれよ」

「なっ…お前だって白子にもやってくれよ」
麻幌の前では黒猫が音を響かせながらエサを食べていた。
亥月の足元には体をすり寄せて来る白猫が甘えた声を出す。

「やだよ…そいつ…黒子追いかけるから…」

「白子だって追いかけるだろ?…まったく…」
亥月は横に腰を下ろし、待ちに待ったと言う様子の白猫にエサを与える。

「今朝も…おねーさんの所からか?」

「ん?ああ…もう会わないけどな…」

「相変わらずだな…」
先に食べ終った黒子が毛繕いを始める。

「まぁな…女もSEXも好きだけど面倒くさいのがな…」

「お前なぁ…」
食事と毛繕いを終えたそれぞれが庇護する猫を抱き上げる。

「…今朝のニュース…お前だろ?麻幌…」

「ああ…女の子の記憶を消し忘れた…」
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