何か、たりない
「部屋狭くて、ごめん。こうなっちゃうけど」
セミダブルのベッドに、お兄ちゃんを中心にして向こう側にゆんちゃん、逆サイドに私が寝転がる。
しばらくは、カチカチと秒針を刻む時計の針の音が耳について、なかなか寝られないな、と思ったけどたぶん違う理由かも知れない。
だから、ため息をついて、ゆんちゃんが立ち上がりトイレに行ったとき、私もこっそりため息をついた。
「ちょっと、けうちゃ・・・」
けうちゃんがベッドで転がり、壁際に行ってしまった。
「いいよ、そのままで」
戻ってきたゆんちゃんは、私とけうちゃんの間を割って入るように中央にもぐりこんだ。お兄ちゃんを、背にして。
私は、だまってゆんちゃんに背を向けて横になった。
ベッドから落ちそうなくらいぎりぎりの端に、棒のようにまっすぐに。
ゆんちゃんも、どこも触れないように、緊張しているのが伝わる。
なのに突然、私の腰にぐっと手を回して、体をくの字になるように引き寄せた。
そして、そっとおでこを背中に押し付けた。
小さな子がイヤイヤをするように、ぐりぐりと。
そのまま、じっと私の心音を聞くように耳をあてて黙っていた。
私は背中に体温を感じながら、いつかの「お願い」を思い出す。
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