恋人ごっこ

10.ソワレにお別れを

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■ ソワレにお別れを








「できれば」なんて、考えてはいけないの。









「せーんざき」


廊下から教室に顔をのぞかせ、あたしは彼の名前を呼んだ。


「…え、和葉さん……?」


「帰ろ」


驚いて目を丸くする彼を気にせず、あたしは「早く」と手招きした。
彼はいそいそとカバンに教科書を詰め込み、それを片手にこちらに来た。


「どうしたんですか?この階来たくないって言ってたのに。」


彼があたしをのぞき込みながら聞いてくる。

確かに、結構前にそう言った。
だって、一年生からの視線が痛いんだもの。
その視線に含まれるのが羨望であろうと嫉妬であろうと、注目されるのは好きではない。
でも、


「たまにはいいかなって思ったんだよ」


そう答えて、教室からこちらに注目している彼らに、笑って手を振ってみた。
黄色い声やらうめき声が聞こえたので、もう絶対やるもんかと決めた。


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