花に、嵐
花は折りたし、梢は高し
美桜ちゃんはまだなにか話していたけど、勝手に通話を終わらせた。

それから直ぐに電源も落としてバッグにしまう。

「……迎えに来るって?美桜ちゃん」

少しの間のあと、旺司郎が訊いてきた。

それに首を横に振って応える。

「そっか………」

「………」

「………」

沈黙が広がる。

朔ちゃんはあれきり黙ったままだ。

もしも美桜ちゃんからだって気づいてたら絶対出なかったのに。

朔ちゃんの前で美桜ちゃんの名前、出したくなかったのに。


もう、お見合いのことも話す気になれなくて。

私はただ窓の外にひろがるビルの明かりを眺めることに専念してた。




どんなに想っても、美桜ちゃんには敵わない。


名前を呼ぶだけで朔ちゃんの心の中は美桜ちゃんでいっぱいになるんだ。


わかりきってたことだから、今更傷ついたりしない!

何度も何度も頭の中で反芻する。







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