SトロベリージャM
ここ数年忙しくて、ゆっくりピアノに触れる時間がなかった。


しかし、最近子どもたちは、じっと座っていられるようになったし、大地も大地パパもジャム作りの腕前をめきめきと上げ、基本的なことはしてもらえるようになったので、やっとピアノが弾けそうだ。


信じられない話だが、この森には、大地の両親とわたしの両親が住んでいるのだ。


わたしの両親は、車で40分ほどで着く商店街で、それぞれ仕事をし、そして、美里さんは、由梨さんの塾でアルバイトをしている。


わたしの住居はそのままで、大地と子どもたちが一緒に住んでいる。


「さぁ、お約束通り、今日はママがピアノを弾いてあげるね。」


わたしは、2人をチビ椅子に座らせたあと、ピアノのほこりを掃いながら、ピアノ椅子に座った。


正面に、自作の楽譜と歌詞をかいたノートを置いて、スタンバイをした。


鍵盤に触れると、もう、指は勝手に動いていた。


大地に会いたくて会いたくて、おまじないのように何回も何回も弾き歌いしてきた曲だから。


最初の伴奏が終わったとき、誰かがドア越しに立っていることに、わたし全く気付かなかった。
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