SトロベリージャM
歌い終わって、きょとんとした子どもたちを見ながら、愛しの夫を想った。


何年経っても、気持ちが色あせることはないだろう。


「ガチャッ」


急にドアを開ける音がしたので、わたしたち3人は驚いた。


「実野里、ただいま。」


そこに立っているのは、毎日毎日一緒に過ごす愛しいあなた。


だけど、この音楽と歌詞が報われるのは、今日のようだ。


「大地、おかえり・・。」


大地の手には、ジャムの瓶が握られていた。


「どうしたの?部屋にジャムを持ってきて。」


大地は、美しすぎる悪戯な笑みを浮かべながら、わたしに向かって近付いてきた。


そして、目の前に立って言った。


「新しいジャムを、秘密で考えて作ってみたんだ。」


見てみると、ストロベリージャムの中に、色とりどりの粒が混ざっていた。


「これは?」


「ストックの花びらを砂糖漬けしたものさ。実野里の好きな苺とストックの花を合わせたジャムだ。味見してみるか?」



< 222 / 225 >

この作品をシェア

pagetop