ゆるふわなキミ


「萌ちゃん……?」

――何かもう訳がわからなくて、何も言えなかった。
こういうのを頭の中が真っ白になるって言うんだろうな。いっそ気絶してしまいたいくらいの衝撃。

「……よしよし。ごめんごめん……」

ゆるふわが私を抱き寄せて背中をぽんぽんと撫でる。
ゆるふわの胸に顔が当たり、目をギュッと閉じると涙がこぼれた。
そうか。あたし泣いてるんだ……

「もう萌ちゃんに会えないかと思ったらちょっと焦った。ごめんな……」
「何よ……それっ……」
「うん。ごめん……」

涙を止めようと思ってもなかなか止まらない。
でも頭の中は冷静になってきてやっと言葉が出た。
背中を、頭を撫でられると妙に安心して、妙に落ち着いてくる。

「だいたい……っ!いつも学校にまで来てるんだから会えなくなるとかないでしょ……?イヤだって言っても来るくせに……!」
「あはは。そうだねっ」
「それに……!」

鼻をずびーっ、とすすってキッと顔を上げ、ゆるふわを睨んだ。

「私は別に逃げないしっ!いつでも来たらいいじゃない!」

ゆるふわに逃げられてるとか思われるのは心外!
それだったら迎え撃って撃退した方がいい!
そう思って。涙いっぱいためてたけど、ゆるふわを睨んだ。
ゆるふわは……予想外にもびっくりした顔をして、やがて……

「ぶっ……あははは!やっぱり萌ちゃんサイコーだわ!」
「なっ、何よ!?バカにしてるの!?」
「全然っ。こんなに可愛いのにスゲー潔くて尊敬してるっ。やっぱ好きだわーっ」

言いながらぎゅーって抱きしめてくるゆるふわ。
つかっ……!

「いい加減離しなさいよ!」
「えーっ。もうちょっとーっ!」

その後。
ドタンドタンと暴れてもゆるふわの腕の中から脱出できず。
暴れる音がうるさいとゆるふわのお母さんがやってきて助けてくれるまで、私はゆるふわに抱きしめられ続けた……


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