ゆるふわなキミ


「何歌う?つか俺から歌っていい?あ、まずはデュエットにする?萌ちゃん何歌える?俺ね――」
「……帰ってもいいですか……?」

有無を言わさずにカラオケに来てしまったけど、もうこのハイテンションについていけない。帰りたい。というか、何で私ここにいるんだろう?何でゆるふわは私の横に座ってるんだろう?何でこんなに距離近いんだろう。離れても離れても来るから、私の場所、奥も奥。はじっこもはじっこなんだけど……
ぐるぐると自問自答してはため息をつく。何でこんな事に。
何で何で……
つか……!!

「話を聞け!ゆるふわ!」

思っていた言葉が怒鳴り声になって口から出た。ゆるふわは目を丸くして私を見ている。


――あ……びっくりさせちゃって悪かったかな――


一瞬そんなことを考えたけど、すぐに思い直す。
ここまで勝手に連れてきた、とにかく話を聞かない。そんなゆるふわのせいだ!うんそうだ!気にしない負けない私!!
ゆるふわの表情はいつの間にか驚いた顔から何かを考えているような表情に変わっていて、

「……もしかして萌ちゃん、歌苦手?へたく――」
「違う!そうじゃなくて!カラオケに来るつもりなんてなかったの!帰りたいの!って何回言わせるの!」

また目を丸くして私を見るゆるふわ。
……え?もしかしてホントに全然話聞いてなかったのコイツ……?


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