私だけの王子様
私は自分が見ている光景が夢じゃないかと思うほど、自分を疑った。


「・・・こんにちは、千夏ちゃん。」


今、私が見ているのは沙耶ではない。
学校で一番カッコよくて、おまけにお金持ちで性格良し。
そんな王子様的な存在の人が今、私の目の前にいる。

その人は前まで付き合っていた人で、それも期間限定の恋愛をしていた人。
だけど約束の一ヶ月になる一週間前に別れてしまった人。


「・・・悠斗。」

「突然スイマセン。沙耶さんから今日が誕生日だと聞いて、どうしてもお祝いの言葉が言いたくて・・・。」


付き合っていた頃と何一つ変わっていない悠斗に懐かしさを感じた。
悠斗・・・わざわざ私の誕生日を祝うために来てくれたの?
それに沙耶が悠斗に私の誕生日を教えたの・・・?


「千夏ちゃん。誕生日おめでとうございます。」


小さく微笑むと悠斗は後ろに組んでいた手を私の目の前にやって来た。
その手に握られていたのは綺麗な赤色をした数え切れないほどのバラだった。


「わぁ、綺麗・・・。」


つい口から漏れてしまった言葉。
だって本当に見とれてしまうほど綺麗なバラなんだ。

こんなにたくさんのバラを悠斗はどこで買ったんだろう。
それに悠斗みたいな王子様にはバラがとても似合っていた。


「このバラは家で育てたものなんです。僕の家は花関係の仕事をしているので・・・。」


そういえば沙耶が前に言ってた様な気がする。
確か、おばあさんがお花の本を出版してるんだよね。


「ありがとう。嬉しい。」


本当に嬉しくて嬉しくて泣きそうになって・・・。
だけど溢れてしまいそうな涙をグッと堪えて我慢した。


「千夏ちゃんが喜んでくれて嬉しいです。迷惑だったらどうしようって心配でしたから。」

「迷惑なんかじゃないよ・・・。嬉しい。」

「良かったです。それと沙耶さんって良い人ですよね。僕に協力してくれるなんて。」

「・・・協力?」

「え!いや、その・・・あの。」
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