嘘付きな使用人

学校生活と言う物

教室に帰ると教科書が配られ担任が話し始める。
すると前の席の清水がコソコソ振り返った。

『ねぇ、彩。
明日学力テスト午前中で終わるじゃん?
その後暇?』

『今暇じゃなくなったー。』

『もー暇なんでしょ?』

窓の外を眺めていた清水は目だけ怜奈に向けた。

『…暇だったら何かあるのかいー?』

『えっと…明日葵町に一緒に服買いに行ってくれないかな?』

『服?』

『いや、実はね…』

怜奈の話はこうだ。
怜奈の実家は県外。
毎年この時期は父親の会社が忙しい為、制服や学校用品は寮に宅急便で送り服や小物を持って新幹線で昨日寮に来た。
しかし新幹線に鞄を忘れてしまい服が昨日着てきた一着しかなく困っている…と。

『いや…まあ財布まで鞄に入れてなくて良かったねー。』

『ううん。
財布も携帯も鞄の中だよ。』

『…はあ?』

『交番に行ってお父さんに電話したら靴の中敷きの下にカード入れてあるって言われてね。』

良くある事なのだろう。
父親も準備が良い。

『だから今これなの。』

手にはプリペイド式の携帯。

『…それ昨日買ったのかね?』

『?うん。そうだよ?』

『なんでそんなボロボロー?』

『あー今日ね、携帯落としたら人に蹴られてまた蹴られて最終的に追いかけてた自分でも蹴っちゃって…。
玄関から音楽室まで蹴られ続けたんだ。』

この子が天然バカと言われる本当の理由は多分これなんだろう。

『まあ携帯の話は置いといて!!
明日学校終わったら着替えて校門集合ね♪』

『…相変わらず強引だわさー。』

清水は諦めて了承する。
同時に担任の話も終了したようだ。

「じゃーね彩ー!!
明日絶対だからねー!」

「はいはい…。」

手をヒラヒラ振りながら怜奈を見送る。
怜奈は昨日制服の予備ネクタイを落とし職員室に届いたとかで急いで教室から飛び出して行った。

帰りも行きと同じメンバーでプラプラ歩く。

「てか酷いよー!
僕だけ席めっちゃ遠いしー。」

「文句なら潤の名字に言えよ。」

「でもさー…」

「そういや清水。
明日佐藤とどっか行くのか?」

面倒になったのか清水に話を振る。
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