嘘付きな使用人
必死の思いで生徒会室に辿り着く。
扉を開けると生憎翔以外出払っているらしい。

頼るのは癪だが今は非常事態だと自分を納得させる。

「かっ…翔さん…!!」

「ん?
…その腰にしがみついてる物体は何だい?
買い物に行ってたはずなのに何でそんなにやつれてるの?」

わけが分からないと矢継ぎ早に質問してくる翔の言葉を遮る。

「とりあえずっ…こいつ引き剥がして下さいっ!!」

翔は必死な清水の様子に笑いをこらえながら近付く。

そして腰にしがみついている怜奈に顔を近付けた。

「こんにちは。」

ニコッと微笑む翔を見て怜奈は口をパクパクさせる。

翔の顔は西洋の王子様のイメージそのままのため夢見る乙女には堪らないであろう。

「清水さんに仕事を頼みたいんだ。
悪いんだけど今日は帰って貰えるかな?


「はっはいいいぃぃぃぃ!!」

「…良い子だね。」

翔がフワッと笑い怜奈の頭を撫でると怜奈は声にならない叫び声をあげ逃げて行った。

清水は疲れ切ってソファーに倒れこんだ。

「…助かりましたー。」

「一体何があったの?」

清水にコーヒーを差し出しながら未だ笑いを堪えている翔が尋ねる。

「…帰り間際にナンパに合って撃退した所『あたしの王子様っ!!』って叫ばれてあの状態ですわー。」

「クスクス…。
じゃあ明日から大変だね。」

その言葉を聞き不登校になりたいと本気で願う清水だった。
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