嘘付きな使用人
AM11:23
桜ノ宮高校生徒会棟5階。
生徒会副会長寮。

もう疲れてきた清水。
ノックする事もやめさっさとマスターキーを取り出す。

「こんちゃー。
新しく使用人になった清水彩ですー。
掃除の時間ですよ~。」

「やぁ。
初めまして。」

清水の声を聞き部屋の奥から出てきたのは最高級の人形の様な人だった。
清水はヒュ~と口笛を吹く。

「お~。
ここまで整った人初めて見たわ~。
髪と目は自前?」

蒼い瞳に綺麗なブロンドの髪。
天使がいるならこんな感じであろう。

「自前…というかは分からないけれど生まれつきだよ。」

「ほ~神様に感謝した方が良いよ~。
あっ掃除するから生徒会室で仕事して下さいねー。」

そう言って清水が箒を持つと青年の手が箒に重なる。

「申し訳ないんだけどこの部屋は見ての通り自分で掃除出来るから止めて貰っていいかな?
あまり部屋に入られるのは好きじゃなくてね。」

仕事はするから、とフワッと笑う。

「…おたく、腹ん中真っ黒でしょ~。」

清水の言葉に一瞬青年の瞳が揺れる。
それはほんの一瞬だけですぐに元に戻ったけれど。

「雅人の言う通りだね。
君の事好きになれそうだ。」

歯の浮くようなセリフだがこの顔だと様になってしまう。

「僕は西条翔サイジョウカケル。
生徒会の副会長をしてます。
…ところで、ずっと引っかかってるんだけど。」

「なんですか~?
スリーサイズは上から~」

「そうじゃなくてね。
清水さん、どこかで会った事あるよね?」

清水は首を傾げる。

「さぁ~?
こんな容姿の人見かけたら覚えてると思うんすけどね~。
街中で見かけたとかじゃないんすか~?」

「んー。
多分かなり昔だと思うんだよ。
小学校…低学年位かな?」

その言葉に一瞬清水の体が強張る。
どこだったかなー?と悩む翔は気付いていない。

「…まぁいいか。
調べたらすぐ分かるだろうし。」

「勝手に個人情報調べる気満々すかー。」

清水の言葉に翔は微笑む。

「僕はね、気になったらとことん知りたいんだよ。
悪い癖なんだよね。」

「昼ドラとか好きそうなタイプですね~。」

「それに…清水さんを調べたら面白そうだし。」

「一般庶民調べた所で面白い事ないでしょー。」

嫌そうな顔の清水とは対象的に楽しげな翔。

「んー僕の勘って結構当たるんだ。」

「…もう分かったから勝手に調べて下さ い。」

さっさと仕事行けよ~と残し清水は部屋を後にした。

「…あいつ苦手だわ。」

そう呟いた顔はいつものヘラヘラとしたそれとは違っていた。

「…調べたって何も出てくるわけない。」

強く拳を握り締める。
まるで何かに怯えるように。
そしてふーっと一つ息を吐いた。

振り返った顔はまた元のやる気のない顔だった。



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