ロンリーファイター



「…、」



デスクに戻りパソコンへ向かってみるものの、集中できるはずもなくキーボードを打つ手はすぐに止まる。

すると昼休みで人の出払ったオフィス内に、ガチャとドアの開く音。



「…おはよーございます」

「?…あ、田口くん。おはよう」



出勤してきたばかりの田口くんは、今日は午後からのシフトだったらしい。



「…、」



その顔に思い出されるのは、今朝の胸に刺さった痛み。



「あの椎菜さん、今朝のこと…」

「…ご、ごめんね。泊まる形になっちゃって。けど本当、何もないから」

「それはいいんすけど、今朝は杏里が…」

「へぇ、杏里ちゃんっていうんだ。可愛い子だったね。彼女?」

「いや、彼女じゃなくて…」

「えー?嘘だぁ。だって合鍵持ってるくらいだもん、彼女でしょ」

「違うって。話聞いてくださいよ」

「話聞くようなことなんてない!!」



珍しく強めの口調になる田口くんに、つられるように声を張り上げた。


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