ロンリーファイター



連れられるがままやってきたのは、ホテルの中にある喫茶店。

あまり人はおらず静けさ漂う店内。その中の一席で、私と彼はコーヒー片手に向かい合う。



「いやぁ、本日はいきなりすみません。お見合い、だなんて父がオーバーに言ってしまったようで」

「いえ、そんな…」



シンプルなスーツに、淡い青色のネクタイで派手でも地味でもなく程良い格好。

背は私とあまり変わらないくらいだけれど、黒い髪に整った眉が清潔感のある爽やかな印象の人だ。
にこにことした顔で穏やかに話す高城さん本人は至って普通に振舞っているけれど、所々に育ちのよさが見え隠れする。



(…なんか、オーラが華々しいなぁ)



『社長の息子』という肩書きだけでもすごいのに、本人のその雰囲気にもつい萎縮してしまう。



「改めまして、高城広嗣と申します。歳は35で、仕事はエミューの子会社・シエルの代表取締役をやっております」

「えっ…てことは35歳で社長さんですか?」

「父から譲り受けたものなので、名前ばかりの立場ですが」

「……」



シエルはfem.の雑貨部門、fem.xxx[フェム・キス]を経営してる会社だ。

日頃あんまり関わらないから知らなかったけど、こんなに若い社長だなんて…!


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