ロンリーファイター



「…大人っすね」

「そりゃもう29ですから」

「いや、中身が」

「最高峰プライムビーフでございます〜」



続いて運ばれた田口くんの料理は、ジュウウ…と熱そうな音を立てている。



「……」



…初めて、かもしれない。

自分のことをこんなによく知っている人も、こんな話を誰かにしたのも。





「あー、お腹すいた」



そう言いながら私は毛先が食事に入らないように、解いていた髪を後ろで結う。



「…あ、そういえばさっきも思ったんすけど」

「?」

「髪、結ってないほうが可愛いっすね」



田口くんはそう言っては、いただきます、と食事を始める。



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