只今、黒天使に仕えてます
「あー、いいとこでツイてない」

真夜中のコンビニで一人、心の中で呟いた。

目の前で「特別ジューシーアンマン」ラス1が消えていく、

あー、多分世界初の試みだろう、あんまんでジューシーを実現させた、「ローンソ」の今世紀最大の発明なのに。

しょうがない。

コンビでデビューしたけど、
片方がR-1で決勝戦まで生き残り、
一斉に世間の目を浴び、
ピン芸人デビューか?くらいの噂をされ、
とてもわびしい思いをしている、
世間でいう「じゃないほう」以下の扱いを受けている、
コンビ芸人のもう片方の如く、

共に開発され、
それなりに美味しいのに、
ジューシーあんまんの影に隠され、
辛い思いをしているだろう
「極上ニクマン」でも、食うか。
こっちの方が10yen安いし。十円に笑うものは、十円に泣くんだぞ。

俺は最近イチオシの女子店員さんのもとへ並び、肉まんを頼む。

「極上肉まん1つですね、110円です♪」

おっ、財布の残高が肉まんの値段とピッタシだ。これがあんまんだったら……フフ、ざまぁ。あんまんを買っていた俺。

口笛を吹きながら、肉まんを持ってコンビニのドアをくぐる。
そのとき、後ろで聞こえる女子店員の声が耳をくすぐる。

「すみませーん、お釣り忘れてますよ♪」

俺は、とっさに振り向く。
「えっ? ピッタシじゃないの?」

「只今、肉まんあんまん10円引きセールを開催しておりまして」

俺は、財布を出して10円を入れる手間と、10円の重さを天秤に掛ける。

……鼻差で手間に傾いた。

「その十円は、君が僕に送ってくれた笑顔へのチップだよ。貰っといて」

「あっ、ほ?、へぇ、ありがとうございます♪」
分かりやすく笑顔がひきつっていたが、もう歩みを進めている氷水氷永には分かることもなく、ただ

「金は損したが、心は得をした」

などという事をほざいていた。
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