神龍と風の舞姫
(ま、誰も私みたいな小娘が、かの有名な海斗・ディフレンドが忠誠を誓った相手なんて微塵も思わないでしょうけどね)

海斗・ディフレンド死亡説が飛び出している今、世界の皇族や貴族、忠誠者を求める老若男女が海斗の周辺を知っているはずもない。

そこらへんは、さすがといえよう。

いろいろなところでちょこちょこ人助けをしたり、しるふが踊り子大会で毎回優勝していたりする割には、その後海斗たちの情報が漏れることはない。海斗がどんな手を使って自分たちの足跡を消しているのかわからないが、今の今まで神龍族の者たちにも見つかったことがないのだからその方法たるや、さぞかし強力な術か何かなのだろう。

海斗は人前で術を使うことはほとんどしない

”本性”を見せるのはしるふに対してだけである

買い物をするのもしるふがほとんどだから海斗は街中の人とかかわることはあまりない

気が付くとどこかに行ってしまっていて街を出る時になって帰ってくることもしばしば

(我ながらよく一緒に旅をしているものよねー。ま、海斗といるとひとまず危険な目には合わないし、海斗は海斗で買い物とかやってくれるから利害の一致よね)

よっと傾いていた荷物を持ち直し、しるふはふと雲一つない空を見上げつつ思う

海斗と旅を知るようになって早二年あまり

先に声をかけたのは自分で、強国神龍国の王族でしかも”本性”は神龍、忠誠者はまだいないという事実を知ってかなり驚いたけれど、だからと言って怖いとかどこぞのパイヤーに売り飛ばしてやろうなんてことは微塵も思わなかった。

もともと人を見る目はある方だと自負している

それまで年ころの乙女一人ふらふら旅をしていても危険な人に声をかけたことはない

もちろんかけられたことはあるけれど、その時は持ち前の気の強さと華麗な風で事なきを得ていた

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