神龍と風の舞姫
式典は午後から行われ、夜はパーティだった

式典の最中、来賓席にずっと座り、聞きたくもない王のあいさつや隣国王の激励の言葉などを聞いていた信次と雪斗は、パーティの華やかさとそこにいる貴族のご令嬢の多さにうんざりした

ここで将来の伴侶を見つけようという目論見がありありとわかるくらいに自分を飾り、お目当ての男を見つけるとさりげなく近づいて行って、媚を売る様子が会場のあちらこちらで見ることができる

そんな風景を父と並びながら二階の手すりにもたれかかり、雪斗は少々うんざりした様子で眺めていた

「これで俺が正室を迎えていなかったら、今頃俺はあの姫さんたちに押しつぶされてたな」

王宮に残して来た妻と近年生まれた第一王子のことを思い出し、少し心が安らぐ

「まったくだ。お前たちの婚約話を断るのもかなりの労力を使うからな」

隣でワインのグラスを静かに回しながら、毎日のように訪れる大臣や皇族たちを追いやっていたころのことを思い出しつつ、信次が返答する

あのころはまだ海斗が王宮にいて、雪斗も婚約していなかったからそれはそれは大変な状況だったのだろう

神龍国というだけでそこいらの貴族や王族は、娘を嫁がせようと躍起になるのに、その相手が神龍国の王族でしかも神龍族最強だといわれる兄妹ならなおさらだ

雪斗が婚約・結婚してからは標的は海斗に絞られた

神龍国王族が代々正室しか迎えないのは有名な話だ

政略結婚はしない

自分の目で認めた女性をただ一人王宮に迎えるのだ

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