神龍と風の舞姫
「ここら辺でいいかしら」

生い茂る木々の間を吹き抜ける風が一番あたるところ

ピピピ

周りの木々たちを見渡していたしるふの背に、大木の上の方から小鳥が舞い降りる

それを認めたしるふは、ふと微笑み、小鳥が止まりやすいように左腕を差し出す

小鳥はふわりとその手のところに泊まり、毛づくろいを始めた

羽を丁寧に一枚一枚とかしていく姿を優しい瞳で見下していたしるふは、風を感じてふと顔を上げた

優しくほほを撫でる風がしるふに語りかける

目をつぶり、その風たちの声にそっと耳を澄ませる

風は吹きすさぶもの

その声は小さく、つぶやくようであっという間に流れて行ってしまう

けれど、そっと心の中で話しかければいろいろなことに応えてくれる

時々その場にとどまってたくさんの話を聞かせてくれる

それぞれがそれぞれに言いたいことを言うから一度に聞くのは大変なのだけれど、長年風と話しているしるふにとってはそれが当たり前だし、心地いいことでもある

今日も風たちはたくさんの情報をもたらしてくれた

中にはどこぞの国の王が病気だとかどこぞの姫君はかわいいといううわさがあったが、実は大してかわいくないとか

他愛のないことも含まれているが、おしゃべりな風たちは見てきたものを誰かに伝えたくてたまらないのだ

風の声を聴くことのできる人はそう相違ないのだから

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