神龍と風の舞姫
「ま、いいや。海斗に怒っても無駄だし」

よっと掛け声をかけてしるふは噴水から立ち上がる

数歩前に出た後、くるんと振り返って海斗に輝く瞳を向ける

「ね?さっきのどうだった?なんか久々に踊ったからさ、感覚わかんなくなっちゃった」

暗闇の中で月光に照らされてしるふの純白のドレスが輝く

「いいんじゃない?何も変わってなかったと思うけど」

「そ?海斗が言うんならいいか」

そういって満足そうに笑うとしるふはくるくると鼻歌交じりに舞い始める

初めて会ったあの時、しるふが風と共に舞い踊らなかったら、きっと自分はあの契約を持ってしるふとは別れていた

今まで見てきたどんな踊りよりもしるふの舞は美しかった

特に着飾っているわけでもないのに見たものを魅了する

その時間だけ、別の空間に連れていてくれる

それが風の舞姫の舞だ

あまり踊りには興味がないが、王族ということもあっていろいろな式典やセレモニーで催し物としての踊りを見てきたからそこそこの審美眼はもっている

しるふもそれを知っていて海斗に聞いてくるのだ

ま、決まった振り付けがあるわけではないから、何が変わった変わらないというわけではないのだけれど…
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