神龍と風の舞姫
海斗のそばに居ては、しるふは望まなくともたくさんのいさかいに巻き込まれる

その度に失われる命を想い、向けられる視線に傷つき、

涙するのならば、その手を離そうと何度も思った

けれど、未だにそれを実行しないのは、はっきり言えば海斗のわがままだ

そばで笑っていて欲しいという、押し殺せない想い

沈黙を破るように、しるふが小さく笑った気がした

「何度も言わせないでよ、自分で決めたことだよ。私が海斗のそばにいたいって思ったからここにいるんだよ」

川を見つめるしるふの髪が風に揺れる

何かを振り払うように勢いをつけて岩から降りたしるふは、

「もどろっか。もういい時間だし。明日にはここを離れるでしょう?」

小さく微笑み、首を傾げる

海斗は、その言葉に頷くと踵を返す

その後にしるふがパタパタとついて行く



戻るつもりはない

刺激的な生活がよかったわけじゃない

ただ、ただ海斗のそばに居たいって願っただけ

その結果が今の生活だっただけ

だから後悔はしてないし、そのてを離すつもりもない

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