神龍と風の舞姫
神龍国を飛び出してすでに半年が過ぎようとしているが、未だに海斗を狙う追手の勢いは衰えない

情報を共有しているらしく、次々と現れるのだから気の休まる時がない

足跡を消してしまえばいいのだが、そうすると矛先はきっと神龍国に向く

海斗を探すであろう、神龍国の臣下たちの動向に注目が行くはずだ

けれど、海斗は知っている

信次の、あの父親の性格なら一年ほどで捜索の手を引かせるはずだ

しかもその捜索はただの体裁だ

本気で探すつもりなど、海斗が国に戻るつもりのないことを知っているであろう信次なら一応探してみたけど、全く尻尾はつかめませんでした、とあっさり、けれど表向きは残念そうに捜索を打ち切るに違いない

「……」

その予想は出しく、今の今まで神龍国の兵に追いかけられたことはない

意識だけ後方に動かし、海斗は相手の気配を探る

このまま逃げていてもらちが明かないし、逃げるという行為そのものが性になわない

広い川べりに出たところで海斗は立ち止まり、後ろを振り返る

その息は、ずいぶんと長い間走っていたにもかかわらずちっとも乱れてはいない

少し遅れてお世辞にもきれいとは言えない顔を、さらにゆがめて追手たちがぞろぞろと這い出してくる

馬に乗っているのは一人

中心人物だろう



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