竜王様のお約束
さりげなくハクリュウの手を払い除けて、ヤヨイはう〜んと首をひねった。


「そうなんだけど。
リョクの気配っていうか・・・存在っていうか・・・。
よく分からないけど、とにかくリョクを感じるのよ。
近くに居る気がするの。」


ハクリュウは真剣に訴えかけるヤヨイの頭を引き寄せて、今度は髪に口づけた。



「いやいや。それは絶対に有り得ない。
リョクを天界に来させないように、先手を打ってコクリュウを人間界へ行かせてあるんだから。」


ヤヨイの話に答えながらも一生懸命に甘い誘いをかけるハクリュウなのだが、可哀想に微塵も気にかけてもらえずにいる。
それどころではないくらい、胸がザワザワとざわめくヤヨイは、何やら重々しい表情で考えを巡らせていたのだ。


「ハクリュウの言ってることは、よく分かるよ。
でもね・・・なんでかなぁ・・・?
私の中の母親としての感覚が、リョクを感じるの。」


そして、思いついたようにはたとハクリュウを見上げた。
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